乾物を取り巻く環境
乾物を卸販売しているフリーランスの営業マンです。
私は乾物でも海産乾物、特に「昆布」の販売をメインに卸販売をしています。
会社員だったことから含めて20年以上、乾物業界に携わってきました。
乾物は、スーパーでもあまり目立たないところに、ひっそりと販売されています。
購買層として、年配者の利用が多く、若年層の利用は少ない商材です。
理由は
「調理に手間がかかる」 ということです。
日本の伝統食材である乾物 が
この世から無くなってしまったらどうなるのでしょうか?
これは、将来の仮説の話ではありません。
本当になくなってしまうかもしれない状況に成ってきています。
〇〇者がいなくなってきている
・生産者の減少
乾物は調理で使うことも手間がかかりますが、生産過程でも手間がかかる食材です。
食材を日光で乾かすことにより、食材の旨味が増します。
また干すことで、食材の中の水分値が減る為、水分活性が抑えられ(菌の増殖を抑える)日持ちがするようになります。
非常に保存に適した食材です。
今、この乾物を作る人がいなくなっています。正確には
「高齢化が進み、後継者が育たない」
ということがよく言われています。
近年、交通網の発達により流通の運送時間が大幅に減りました。
このことにより乾物ではなく、生のままで野菜・海藻が多く流通できるようになりました。
昔から乾物を生産している所は田舎です。
昔は交通手段が不便だった為、その土地で、その土地の方々が仕事として、乾物を家族総出で生産していました。
子供が孫が家業を継いで乾物の生産を守ってきました。
しかし、現代は移動手段も多くなり、若い人などは家業を継がず、別の仕事・隣町に働きに行きます。
田舎にとどまって3K仕事を続ける理由が無いのです。まして都会の方が高給な仕事がたくさんあります。
函館の昆布生産者の家庭でも同じようなことが起こっています。
昔は夏になると、一家総出で乾燥昆布の生産にあたりました。息子夫婦はもちろんの事、孫も手伝っていたと聞いています。
漁場である浜は車で函館市から30分程度しか離れてません。
したがって今は、奥さんは函館市内でスーパーでパート。息子さんも函館市内で就職しているそうです。昆布の仕事は夏から秋までですが、市内の仕事は1年中あります。安定した仕事があります。
夏の最盛期は、大学生のアルバイトを雇って、昆布の生産をしています。アルバイトを雇えば人件費がかかります。生産者は、昔に比べて収入が減ったと聞いています
・消費者の減少
購買層の多くは50歳代以上の方々が主体です。
若い方は乾物に興味がないかと思います。しかし給食でよく出てきた 「ひじき
・若布」などは若い方にもなじみがある乾物かと思います。
近年は共稼ぎ家庭が増え、調理に時間がかけられなくなってきました。
おのずと、手間のかかる乾物を使った料理は敬遠されがちです。
家庭で使われなくなってきた理由として、
・水戻し
・火にかけて煮る といった手間があげられます。
この手間を嫌い、乾物料理は、調理済の総菜で買うことが増えてきたと思います。
(総菜で使用している乾物は、価格の安い外国産が多いです)
乾物は保存食でもある為、個包装品よりも規格量の多い商品が販売されてきました。
このため、調理する際も大皿料理になってしまいます。
うちでも2日に分けて食べていました(笑)
そもそも乾物に賞味期限が必要か?
元来、乾物とは保存食です。カビが発生したり、腐敗しない限り食べられます。
普通にいい状態で保存・保管でされていれば2年・3年と大丈夫な乾物に賞味期限を設けることはおかしくないのか?
理由は、
食品というカテゴリーの範疇で販売される場合「賞味期限」の設定をしなくてはなりません。
昆布の場合、袋に詰めた日より1年間を賞味期限として定めています
(業界団体の自主基準として)
ですから、2年間メーカーの倉庫で眠っていた昆布が今日袋詰めすれば1年後が賞味期限になります。
昆布が生産されてから2年経ってても、3年経ってても、さらに1年です。
変な感じです(-_-;)
賞味期限が在って無いように思えます。
こういう賞味・消費期限が食品ロスを増やしています。
*消費期限とは2日~10日程度の設定が多い。生鮮品に近いものに設定される。
メニューは300種類以上!おいしい食事宅配サービス「食宅便」
乾物が消えてしまうと・・・・
日本の食卓の風景が大きく変わってきます。
食材・味・調理方法・・・様々な料理が成り立たなくなってきます
例えば・・・・乾物としてのひじきが無い場合
「ひじき煮」などは、生のヒジキを調理していきます。
もともと異物が多く混入・付着している海藻なので水洗いをしっかりしなくてはなりません。また生ではなく塩蔵かもしれません。その場合は塩抜きが必要です。
塩抜き・異物除去の下準備が整ったところで煮ていきましょう。
出汁とりたいのですが、カツオ、昆布がないので「味の素」で採ります。
*味の素・・・サトウキビから旨味成分を抽出しています。
味付けは、乾物と時と同じ調理方法にしても、乾物ほど浸透率はよくないので、しっかりと味が乗らないと思います。
結果、すこし浅炊き風の「ひじき煮」が出来上がります。
こんな感じです。乾物時ほど栄養素もないと思います
一番は味わいが変わることが心配です。するめにしても烏賊の時とは味わいが違います。イリコ・カツオ・椎茸なども同じです。
解消への取り組み
商品単価を適正価格にする
日本の食品の単価は世界一割安だ!と言ってもいいでしょう。
ファミレス・牛丼チェーン店等みても破格の値段で食べられます。
また食材(食品)の販売単価も安いです。
生産者のコスト面から考えても非常に安い価格です。
これは、それだけ日本人が賢く、コストカットしている証拠ではありますが、多くは小売り業者の販売価格設定が低い事が原因だと思います。
安いことに越したことはありません。消費者である私も有難い事です。しかし矛盾するようですが、この低下価格化が生産する従事者を減らしています。
乾物業界では時代に逆行し、近年値上げが続いています。
不作や供給不足が原因です。
価格が上がれば、消費が鈍くなります。
売れない状況が続き、生産者の採算が合わなくなり生産者が減っていく
不作・・供給不足 → 価格高騰 → 購買減少 → 販売不振 → 原料価格低下 → 生産者の給料減 → 生産者の減少 → 不作・供給日促 → ・・・・
の繰り返しです
そういった中でも小売業者(イオン)などはさらに価格下げのセールをしています。
日本一の小売業者がこれをしてしますと、一般消費者に方々は、「まだ安くできる?」
と勘違いしてしまします。
価格を上げず、消費を促すことはいい事ですが、生産者側から見ればあまり歓迎できません。
販売価格の設定をあげていかなくては生産者の給料が魅力的になりません。
給料が魅力的でない3K仕事に、若い方々は就職したがりません。
まずは生産者を確保し生産量を増やす。これをすれば、商品の供給が増え価格設定が抑えられます
乾物は小売業者においても利益商材です。生鮮品・大手メーカー商品は薄利商材と言われています。
生産・流通・小売が乾物の適正価格・適正販売をしていかなくては、将来、乾物は市場から無くなってしまうかも・・・・
簡単に便利につかえるような商材に変える
数年前より、全国規模で展開する食品卸がいろいろな乾物商品を開発しました。
カット済など調理の手間を省いた乾物を数種類ミックスした商品などです。
このミックス品を使用して調理すれば煮たりする時間は必要ですが、適量の料理ができます。とっても便利で経済的です
いろいろなメディア・SNSなどで宣伝しています。見かけたら是非使いって見てください。
適量販売を心掛ける
昔のような大家族ではなく、核家族化が進んでいる現代は1袋の規格量が多い乾物では使いづらいです。
そこで1回分づつ放送した乾物を販売していくと手に取っていただく機会が増えてくるかと思います。
しかし、生産コストが従来品よりかかる為、割高な商品になってしまうのが欠点です。
また乾物屋の多くは小企業です。全社が個包装にする設備投資ができるわけではありません。
なかなか条件的に厳しいですが、適量販売ができると購買が進むかもです。
乾物の良さを伝えていく
乾物の持つ良さを子供に伝えていく。
各家庭で乾物を使った、美味しくて栄養のある料理をしてくだい。
乾物を使った料理の旨さを子供たちに覚えてもらう
このことが一番大事なのではと思っています。
昔食べた母の味
世の中で一番うまい料理です(笑)
本当に乾物には旨味・栄養素がたくさん詰まっています。すこし時間を使って子供たちにおししい乾物料理を作ってください。
干し椎茸のだし、イリコだし、昆布だし、かつおだし、千切り大根のだし、干し貝柱のだし、豆から出るだし等、天然の旨味調味料です。
おいしいだしは減塩料理につながります。
未来にも、美味しい乾物をよろしくお願い致します。
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